青い空
ブラりと散歩に出掛けた。いつもと違う方角へ特に目的もなく進んでみたりする。
途中、竹藪の中に古びれた神社を見つけた。もう随分と手入れがされていない様子で、狛犬なんかは右側の方がどこかへ行ってしまったのか、台座だけが残されていた。
本堂前の階段に腰掛けボーッとする。会社から連絡がないのをいいことに連絡を怠っていたり、かと言って辞める旨を伝えるのもなんだか出来ないでいる。
「なんだかもう疲れたな…。」と、他人行儀な言葉が口から溢れた。「いい歳して何やってんだか」誰でもない自分に対して。
空は気が狂いそうなほど青かった。
「空が青いなー」「そうですね」
なんとなく出した声に狛犬が答えた。
「君はひとりかい?」「そっちのはこんなとこでやってられんと、もう随分と昔にどこかへ行ってしまいました」
「君はどこかへ行かないのかい?」「一応、ここにいるのが役目なので」
「役目?」「ええ、仕事みたいなもんです。私に関して言えば、別に誰かに頼まれた訳でもないのですけど」
「そうなの?」「まぁ他にやることもないですしね。わたしはたまたま神の守護ってだけで、それぞれ誰にでも誰に頼まれた訳でもない役割があるのだと思いますけどね」
「そんなもんなんかね」「そんなもんです。誰にも見られなくても、たまに貴方のように見つけてくれる人がいます」
狛犬はそれっきりであった。